2014年 11月 08日
ロコジョージの想い出 |
ロコジョージのことをもう少し書きたくなった。
僕が初めて行ったのは22歳の頃だからもう15年前のことになる。あの日は仕事で京町堀に行かなければならなかった。仕事は思ったよりも早く終わったので、靭公園や近隣を散策することにした。今と比べるとまだまだ飲食店もまばらだったように思う。特に目当てがないのでまあそんなものか、と思っていたら雑居ビルの1階の奥の方、アメリカンな電飾がちらっと見えた。吸い込まれるように足を踏み入れたのがロコジョージだった。
入ったはいいが、ここは店なのか?それとも倉庫なのか?雑然とした店内。古着とアメリカン雑貨、そしてレコード。お世辞にもきれいな店とはいえない。値段が付いているものと付いていないものが同居している。まさにジャンク。しかしジャンクは中毒性が高い。僕の心は激しくときめいていた。
「レコード、好き?あっちこっちにあるからゆっくり見てってね」
店主ジョージさんの言う「あっちこっち」は本当にあっちこっちで、LPはなんとなくジャンル分けされてはいたけれど、スリーヴのない裸のシングル盤が収められた箱はあっちこっちに散乱していた。気がつけば、腹を空かせた狼のようにシングル盤を漁っていた。
結局その日は何も買わなかったと思う。膨大な枚数のシングル盤たちの相手は日を改めたほうが良さそうだ。そう思って途中で諦めたのだ。
シングル盤は20円から100円前後が相場だった。どうしようもないものから驚くようなシングル盤まで一律の値段。昨日も書いたけれどザ・バンドの「Rag Mama Rag」のキャピトル・オリジナル盤も100円だった。盤の状態はよろしくなくても物質として手元にある喜び。そしてノイズ混じりも悪くないのだ。
ロコジョージを知る人にはおなじみだと思うけれど、試聴し放題だった。なんというか放任主義のような店で、店内に置かれたポータブル・プレイヤーの横にはポットと紙コップが常設されていた。紅茶かコーヒーが飲めた。シングル盤を聴きながらコーヒーをすする。プレイヤーは2〜3台あったはずだけど、いつも誰かがどれかを使っていた印象がある。僕もそのひとりだったわけだ。
だいたい10枚くらいをピックアップして、紙コップにコーヒーを作ってA面に針を落とす。ふた口ほどすするとA面が終わる。ひっくり返してB面に針を落とす。コーヒーをすする。これの繰り返し。そして裸のシングル盤は埃と汚れのおかげでいつも手が真っ黒になった。シングル盤の醍醐味、あるいはロコジョージの醍醐味を存分に味わっていた。
僕はリピーターのひとりだったが、ロコジョージとは客以上の関係にはならなかった。常連客を連れてアメリカ買い付けツアーをしていることも聞いたことがあった。そこに参加したくないわけではなかったが、「ほぉ、それはそれでいいですね」という感じで深く入り込まなかった。僕の性格上、こういうことに深く入り込みたいはずなのに。今も不思議に思うことのひとつだ。
ロコジョージが閉店したのは10年ほど前だろうか。そのへんの記憶は曖昧だ。何年か前にリサイクル関連の仕事をしていると人づてに聞いたことがあった。そうか、もうあんなヘンテコな店はやっていないのか、と残念に思ったこともある。あのテイストに近い店に入ると、ロコジョージを思い出したりもしたこともあった。
ジョージさんは11月3日に亡くなられた。6日には葬儀も行なわれたという。事前に知っていたら僕はそこにいただろうか。もちろん仕事があったから現実的には難しかっただろう。もしそうでなくても僕はそこにいなかったと思う。シングル盤をむさぼるように聴くこと。それが僕にできる弔いだ。シングル盤の面白さを教えてくれたロコジョージ。感謝の気持ちでいっぱいだ。
ザ・バンドの「Rag Mama Rag」を聴き終えて、B面の「Unfaithful Servant」に針を落とす前に盤面をなぞると、指先にうっすらと黒いものがついていた。やるね、ジョージさん。
僕が初めて行ったのは22歳の頃だからもう15年前のことになる。あの日は仕事で京町堀に行かなければならなかった。仕事は思ったよりも早く終わったので、靭公園や近隣を散策することにした。今と比べるとまだまだ飲食店もまばらだったように思う。特に目当てがないのでまあそんなものか、と思っていたら雑居ビルの1階の奥の方、アメリカンな電飾がちらっと見えた。吸い込まれるように足を踏み入れたのがロコジョージだった。
入ったはいいが、ここは店なのか?それとも倉庫なのか?雑然とした店内。古着とアメリカン雑貨、そしてレコード。お世辞にもきれいな店とはいえない。値段が付いているものと付いていないものが同居している。まさにジャンク。しかしジャンクは中毒性が高い。僕の心は激しくときめいていた。
「レコード、好き?あっちこっちにあるからゆっくり見てってね」
店主ジョージさんの言う「あっちこっち」は本当にあっちこっちで、LPはなんとなくジャンル分けされてはいたけれど、スリーヴのない裸のシングル盤が収められた箱はあっちこっちに散乱していた。気がつけば、腹を空かせた狼のようにシングル盤を漁っていた。
結局その日は何も買わなかったと思う。膨大な枚数のシングル盤たちの相手は日を改めたほうが良さそうだ。そう思って途中で諦めたのだ。
シングル盤は20円から100円前後が相場だった。どうしようもないものから驚くようなシングル盤まで一律の値段。昨日も書いたけれどザ・バンドの「Rag Mama Rag」のキャピトル・オリジナル盤も100円だった。盤の状態はよろしくなくても物質として手元にある喜び。そしてノイズ混じりも悪くないのだ。
ロコジョージを知る人にはおなじみだと思うけれど、試聴し放題だった。なんというか放任主義のような店で、店内に置かれたポータブル・プレイヤーの横にはポットと紙コップが常設されていた。紅茶かコーヒーが飲めた。シングル盤を聴きながらコーヒーをすする。プレイヤーは2〜3台あったはずだけど、いつも誰かがどれかを使っていた印象がある。僕もそのひとりだったわけだ。
だいたい10枚くらいをピックアップして、紙コップにコーヒーを作ってA面に針を落とす。ふた口ほどすするとA面が終わる。ひっくり返してB面に針を落とす。コーヒーをすする。これの繰り返し。そして裸のシングル盤は埃と汚れのおかげでいつも手が真っ黒になった。シングル盤の醍醐味、あるいはロコジョージの醍醐味を存分に味わっていた。
僕はリピーターのひとりだったが、ロコジョージとは客以上の関係にはならなかった。常連客を連れてアメリカ買い付けツアーをしていることも聞いたことがあった。そこに参加したくないわけではなかったが、「ほぉ、それはそれでいいですね」という感じで深く入り込まなかった。僕の性格上、こういうことに深く入り込みたいはずなのに。今も不思議に思うことのひとつだ。
ロコジョージが閉店したのは10年ほど前だろうか。そのへんの記憶は曖昧だ。何年か前にリサイクル関連の仕事をしていると人づてに聞いたことがあった。そうか、もうあんなヘンテコな店はやっていないのか、と残念に思ったこともある。あのテイストに近い店に入ると、ロコジョージを思い出したりもしたこともあった。
ジョージさんは11月3日に亡くなられた。6日には葬儀も行なわれたという。事前に知っていたら僕はそこにいただろうか。もちろん仕事があったから現実的には難しかっただろう。もしそうでなくても僕はそこにいなかったと思う。シングル盤をむさぼるように聴くこと。それが僕にできる弔いだ。シングル盤の面白さを教えてくれたロコジョージ。感謝の気持ちでいっぱいだ。
ザ・バンドの「Rag Mama Rag」を聴き終えて、B面の「Unfaithful Servant」に針を落とす前に盤面をなぞると、指先にうっすらと黒いものがついていた。やるね、ジョージさん。
by goodtimemusic
| 2014-11-08 01:23