2018年 02月 12日
風に乗って |
2月11日(日)正午。ラリーパパは堺筋本町のスタジオ・ナインスペースで3時間の予約を取っていた。今夜行う梅田ムジカジャポニカでのワンマンライヴのためのリハーサルだ。
時間を少しだけ遡ることにしよう。
僕とガンホくんは最寄駅が同じなのでいつものように待ち合わせをすることになっていた。しかし予定時間の直前になって「ちょっと遅れるから先に行っといて」と連絡が入る。ひとりで電車に乗っているとスチョリくんから「すません、お先にどうぞ」と連絡。「忘れ物した!」と次いでチョウくん。「渋滞してます」と車で向かっていた十夢くん。「少し遅れます」と辻くん。5人から律儀な連絡を受けた。ナインスペースには僕ひとり。しょうがない、スタジオのセッティングでも始めておくか、と思ったが腹が立ってきたのでやめた。時計の針は正午を少し過ぎていた。僕は腕時計を見ながら「やれやれ」とひとりごちていた。
4時間後、2月11日(日)午後4時。ナインスペースでのリハーサルを終え、時間と場所はムジカジャポニカへと移る。
ラリーパパとして、つまり5人揃ってムジカジャポニカのステージに立つのは今回が初めてだった。今月いっぱいで移転が決まっているムジカジャポニカ。ソロでの出演や「レインボーヒル」で何度もお世話になってきた。恩返しの意味も込めてたっぷりとワンマンをさせていただくことになった。チケットはおかげさまで完売、早い時間から外には開場を待つ長い列ができていた。早くから到着した方にはリハーサルの音が漏れ聞こえる、というお楽しみもあったようだ。
午後7時。客席はぎっしりと埋まっている。僕はいつものように5人を見送り、ワンマンライヴがスタートした。オープニングは10数年ぶりに演奏する「ラストショウ」だ。『Welcome Back Tour』でも何度かセットリストに入れようという案が出たりもした。しかしなんとなく却下になった。扇町ビル時代のムジカジャポニカで最初で最後のワンマン。「ラストショウ」を組み込んだガンホくんの想いがそこにあった。
誰かの夢の続きさ
新しい幕が今上がる
2月11日(日)午後4時30分。ムジカジャポニカでの最終リハーサルが始まっていた。セットリストの確認、各楽器の調整なども踏まえて進んでいく。ザ・バンドの「クリプル・クリーク」をジャムってみたり和やかなリハーサルだ。何より音が太い。そしてグルーヴしている。いい夜になることを裏付けるようなリハーサルだった。
右と左の足を代わる代わる出せば
それでいいのさ
2月11日(日)午後8時10分。第1部を終えた5人をステージ裏で出迎えた。ライヴは順調ではあったがグルーヴィーだったリハーサルに比べて少し元気がなかった。第2部が始まる直前、僕はチョウくんの肩をガシガシと揉んで送り出した。強く揉みすぎたのでチョウくんが持っていた焼酎の水割りがこぼれそうになった。
"おっさんの意地"を見せた熱のある「まちとまち」で第2部がスタートした。「一人でできるかな?」「明日はないのさ」へと続き、"ムジカジャポニカの看板娘"せいこさんをステージに迎えてグレイトフル・デッドの「ケイシー・ジョーンズ」を演奏。これも何年ぶりか。5人の体に染み込んだ楽曲のひとつ、いいパフォーマンスだった。せいこさんと一緒にできたこと、これも幸せな時間だった。
リハーサルでも時間を多く使った新曲はアンコールで披露した。辻くんの作詞作曲、タイトルは「雨がやむまで」。年末あたりからデモ音源のやりとりを幾度となく繰り返してきた。限られた時間の中、詰めきれていない部分もあったが披露するべき曲だと思った。5人のアイドルであるザ・バンドを土台にソウル〜リズム&ブルース志向が垣間見える、それでいて辻くんならではのポップセンスもあちこちに散りばめた歌。まだまだ化けていくのだろうな、と僕は確信している。
なみだのわけを話さなくていいよ
ただそばにいて 雨がやむまで
傘はなくていい そうぼくがいる
雨がやむまで ここで
「もう終わり?まだやれる?」
アンコールは「雨がやむまで」「路上 ON THE ROAD」「黒猫よ、待て!」の3曲の予定だった。ステージを降りて楽屋に戻ろうとしたラリーパパにせいこさんが言う。客席からはアンコールを待つ拍手が鳴り止まない。再びステージに戻った5人は「枯葉のブルース」を。そして「風に乗って」が始まると、カウンターにいたせいこさんが僕を手招きして呼ぶ。
「この歌いちばん好きやねん。嬉しいわぁ」
それを聞いた瞬間、僕の視界がぼやけた。ステージを見るとまるで5人がその言葉を噛みしめて歌っているようだった。最後まで見届けるべきだったが、いても立ってもいられずステージ裏で5人が帰ってくるのを待つことにした。深呼吸をひとつして、腕時計を見ると午後9時半を過ぎていた。
悲しみはすぐそばにある
僕らはここでさよならするのさ
「はいー、お疲れさま!」
「お疲れっすー」
「あざーす」
最初で最後のムジカジャポニカでのワンマンライヴ。汗ばんだラリーパパの5人がステージから帰ってきた。
by goodtimemusic
| 2018-02-12 16:21